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日本が再び世界の医療を震撼させる:世界初の「脳腫瘍を破壊するウイルス」保険適用から、脳浮腫を起こさない次世代ウイルスへの躍進

日本が再び世界の医療を震撼させる:世界初の「脳腫瘍を破壊するウイルス」保険適用から、脳浮腫を起こさない次世代ウイルスへの躍進

clock2026/05/23

2021年、日本は悪性脳腫瘍に対するウイルス療法薬を世界で初めて承認し、世界の医療史にその名を刻みました。その薬の名は「デリタクト(Derytact)」。日本の製薬大手・第一三共が製造販売するがん治療用ウイルス製剤で、一般名はテセルパツレブ(Teserpaturev:開発名 G47Δ)です。これは、東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授らの研究グループによる長年の研究成果に基づき実用化されたものです。デリタクトは一般的な抗がん剤とは異なります。遺伝子組み換え技術により、脳のがん細胞だけを狙い撃ちして破壊する「生きたウイルス」なのです。

そして、日本の報道各社が伝えるところによると、2026年5月20日、日本は脳腫瘍治療の領域にさらなる新風を吹き込みました。この療法の次世代版である次世代がん治療用ウイルス「T-BV(ティーベブ)」の臨床試験(治験)が開始されたと発表したのです。T-BVは、第一世代のウイルス療法の最大の課題であった「治療後の脳浮腫(脳の腫れ)や腫瘍の腫大」を克服するためにアップグレードされた革新的なバージョンです。この革命の中心的役割を果たしているのも、やはり東京大学です。

悪性神経膠腫(グリオーマ)とは?脳がんの中で最も困難な難題

日本がこの治療法でターゲットにしているのは、「悪性神経膠腫(あくせいしんけいこうしゅ:悪性グリオーマ)」です。これは、膠芽腫(こうがしゅ:グリオブラストーマ)やグレード4の星細胞腫(アストロサイトーマ)などを含む、最も危険な原発性脳がんの一種です。このがんの恐ろしさは以下の点にあります。

  • がん細胞がまるで木の根のように脳の正常組織に染み込むように浸潤する
  • 手術で完全に摘出することが極めて困難である
  • 再発がほぼ避けられない

標準的な手術、放射線治療、化学療法を行ったとしても、多くの患者さんが短期間で再発してしまいます。日本のデータによると、悪性グリオーマの平均生存期間は通常2年未満、5年生存率は10%以下とされています。だからこそ、世界は化学療法のようにがん細胞を単に毒するのではなく、「生きたバイオ医薬品」を使って内側からがんを狩り、駆逐するという、全く異なる戦略を必要としていたのです。

口唇ヘルペスウイルスから「がんを滅ぼす武器」へ

医療界を驚かせたのは、この療法に、誰もが日常的に耳にする口唇(こうしん)ヘルペスの原因ウイルスである「単純ヘルペスウイルス1型」が使われているという点です。日本の研究グループは、このウイルスの遺伝子を改変し、がん細胞内でのみ増殖でき、正常細胞内ではほとんど増殖できないようにしました。

このウイルスを脳腫瘍内に直接注入すると、がん細胞に侵入して爆発的に増殖し、がん細胞を内側から破裂させて死滅させます。そして、破裂したウイルスは周囲の他のがん細胞へと次々に連鎖していきます。これが「がん治療用ウイルス療法」と呼ばれる所以です。

しかし、特筆すべきはそれだけではありません。がん細胞が破壊されると、患者自身の免疫システムがそれを「排除すべき異物」として認識し始めます。つまり、ウイルスが直接がんを殺すだけでなく、患者自身の「抗腫瘍免疫」を呼び覚ます(スイッチを入れる)のです。この点こそが、本技術が以下の領域の交差点として、研究者から高く評価されている理由です。

  • 遺伝子治療
  • 免疫学
  • ウイルス学
  • 再生医療

2021年の歴史的節目:日本が脳腫瘍ウイルス療法を公的医療保険に適用

2021年、デリタクトは世界初の脳腫瘍用がん治療用ウイルス薬として承認され、同時に日本の国民健康保険制度(公的医療保険)に組み込まれました。これは歴史的な快挙です。なぜなら、それまでウイルス療法は研究段階か、限定的な臨床試験(治験)にとどまっていたからです。

現在の薬価は以下の通りです。

  • 1mL 1瓶あたり 約1,431,918円(ベトナムドン換算で約2億4,000万ドン以上)
  • 脳の定位手術による注入は、1コースで最大6回まで。

しかし日本国内では、保険適用となっているため、患者がこの金額を全額自己負担することはありません。日本在住の保険加入者であれば、「高額療養費制度」が適用されるため、実際の自己負担額は大幅に抑えられます。

なぜ世界はそこで立ち止まらなかったのか?

歴史的なパラダイムシフトを起こした第一世代のウイルスですが、依然として大きな課題が残されていました。ウイルスが腫瘍を激しく破壊し、強い免疫反応を誘発すると、脳内で「炎症反応、腫瘍の腫大、脳浮腫」が発生することがあります。

空間が骨で囲まれている脳においては、わずかな浮腫(腫れ)であっても頭蓋内圧の上昇を招き、脳組織を圧迫して痙攣(けいれん)や意識障害を引き起こし、最悪の場合は命に関わります。これこそが、科学者たちがさらなるウイルスのアップグレードに挑み続けた「ボトルネック(結び目)」だったのです。

T-BV:がんを滅ぼすと同時に脳浮腫を防ぐ「次世代ウイルス」

2026年5月、東京大学の研究グループは、新たなウイルス「T-BV(ティーベブ)」の第I相臨床試験(治験)の開始を発表しました。第一世代が「がんを滅ぼす」ことだけに特化していたのに対し、T-BVには「ベバシズマブ」を生み出す遺伝子が組み込まれています。ベバシズマブは、血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害して異常な血管新生を抑え、脳浮腫を強力に軽減することで知られる抗体医薬です。

この技術の秀逸な点は、T-BV自身が「腫瘍の内部で自らベバシズマブを産生する」ように設計されていることです。つまり、ウイルスががんを攻撃しながら、その場で同時に腫れ(浮腫)を抑えるのです。

なお、T-BVは現時点では市販薬ではありません。人間への初投与となる第I相臨床試験の段階です。重要なのは、この開発プロセスのほぼすべてが、外資系巨大製薬企業(メガファーマ)主導のプロジェクトではなく、日本の「アカデミア(大学・研究機関)」主導で行われているという点です。

ベトナムの患者もこの治療を受けられるのか?

現時点で、次世代療法である「T-BV」は日本国内での臨床研究段階にあり、正式に承認されておらず、日本国外での利用はできません。また、すでに承認されている「デリタクト」に関しても、現状は日本国内での使用が主となっています。

ベトナムの患者さんがこの治療へのアクセスを希望する場合、日本への渡航が必要となり、高度な脳神経外科手術、特に「脳定位手術(フレーム等を用いた精密な穿刺手術)」が可能な医療機関を受診する必要があります。その場合、薬剤費に加えて以下の費用が自己負担となります。

  • 定位脳手術費用
  • 入院費
  • MRI検査および各種検査費用
  • ICU(集中治療)や神経学的合併症の管理・モニタリング費用

日本の公的医療保険を所有していない外国人の場合、実際の総治療費は数千万円規模に達する可能性があります。

「症状の緩和」から「生きた生体ロボットの制御」へ

最も注目すべきは、単に一つの新薬が登場したということではなく、医療が「生きた生物学的プラットフォーム」をがん治療に活用する時代へ完全に突入したという事実です。ウイルスはもはや、人間に病気をもたらすだけの存在ではありません。遺伝子技術の手によって、ウイルスは「生体ロボット」へと生まれ変わり、自ら腫瘍を探し出し、自ら増殖し、がんを攻撃して、自ら免疫を活性化させています。

2021年の歴史的なマイルストーンから、2026年の次世代「T-BV」へ。日本は単に薬を作っているのではなく、「未来における脳腫瘍治療の概念そのものを書き換えようとしている」と言えます。医療通訳の現場に立つHICOのこの見解に、皆さんも共感していただけるのではないでしょうか。

参考リンク

デリタクト注の基本情報(薬効分類・副作用・添付文書など)|日経メディカル処方薬事典

脳腫瘍新ウイルス療法治験開始へ 腫れ抑える効果付加、東大研究所(共同通信) - Yahoo!ニュース

悪性脳腫瘍に対する次世代型ウイルス療法の 医師主導治験を開始 ――脳腫瘍の腫れを生じないベバシズマブ発現型ヘルペスウイルス――|東京大学医科学研究所

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